2012年08月07日

ひき逃げ 1966日 成瀬巳喜男

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交通事故を扱った映画が多い晩年の成瀬映画の中でも、
題名どおり、交通事故そのものがテーマになっています。
けれど成瀬映画らしい、女の怖さが描かれます。
また、交通事故のシーンを省略していない点もめずらしく、
また、他の作品には観られない撮り方もしています。

子を失った主人公の高峰秀子が、ひき逃げの真犯人の司葉子を追い詰める、
その各所のシーンは女の怖さ、執念、でもやりきれなさを嫌ってほど感じさせます。
司葉子もひき逃げ以来の怯え方と、最後の悲劇の安堵の顔(演技)は特筆者です。
そして小沢栄太郎もこの人はなんて憎たらしいのでしょう。

交通事故という社会問題から入り、女の情念のサスペンスになり、
ラストに、主人公の辛い姿で、もう一度社会問題を提起して出口とした構成です。

成瀬映画としては異色かと想わせる感じもありますが、
同じ年代の「女の中にいる他人」と重なる人の内面が醸されている作品です。

成瀬巳喜男ファンでしたら、これも見逃せないでしょう。


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