2019年08月26日

たかが世界の終わり 2016加/仏 グザヴィエ・ドラン



多分自分勝手に12年間生きてきたのが主人公のルイ(ギャスパー・ウリエル)、でも彼は社会的には成功し、家族を想う気持ちも強かった、けれどこれも多分だけれど、田舎では受け入れられない立場だったのでしょう。
そのルイが自らの死を告げるために帰郷します。
待つ母マルティーヌ(ナタリー・バイ)と別れた頃はまだ幼かった妹のシュザンヌ(レア・セドゥ)は大歓迎です。
兄のアントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)は不機嫌、初めて顔を合わせるアントワーヌの妻のカトリーヌ(マリオン・コティヤール)は、なにかと感情的になりぶつかり合う、アントワーヌとマルティーヌ・シュザンヌの間をとりなします。

これも多分ですが、あまり仲良くない家族でそれは経済的な理由もあるでしょうし、田舎の詮索もあるでしょう。そしてアントワーヌにとってはルイは家族を捨てた弟です。
弟ルイの自分勝手に反発してしまいます。たとえルイの死期が近いことを勘付いてもです。

マルティーヌとシュザンヌにとってルイは英雄です。その二人に中々真実を告げられないルイです。


愛おしい時も嫌悪の時も許す時もクローズアップで、観ていて息苦しくなり、汗臭くもなります。
ルイを迎える家族はすぐに感情が空回りする物語です。

人と人がわかり合うというのは奇跡なのではないかと思えてきます。
真摯なルイだから、同じようにしっかりとした態度で迎えようと家族はするのですが、どうしてもそれができません。そして、アントワーヌの処理しきれない感情がきっかけで、アントワーヌとマルティーヌ・シュザンヌはぶつかってしまいます。

目的は死を告げて別れをすることだったルイですが、もしかしたら告げることができないこと、家族の今を知る事、それはここも多分ですが、何も12年前と変わっていなくて、自分も変わっていないことを感じ、目的は果たせなくても、けじめは着いたのかもしれません。
そして家に戻り今一番大切なパートナー(伴侶)にけじめを着けたことを告げるでしょう。その伴侶に死にゆく姿を見せるのがルイの本当にやりたいことだったのではないでしょうか。
死への準備と対峙を考えさせる深い内容でした。


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