2025年03月31日

3月大歌舞伎【通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)】




大序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場
三段目 足利館門前進物の場
同   松の間刃傷の場
四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
同   表門城明渡しの場
浄瑠璃道行旅路の花聟

開演10分前に「口上人形」で配役の読み上げがり、盛り上がります。大序の幕開けも他の演目とは違っています。やはり忠臣蔵の通しは特別です。

昼の部は、判官が刃傷沙汰を起こし、由良助が仇討を決意するまでで、重厚な場面が多く、それを緩和する段があり、最後は舞踊で締めます。

判官はお家捕りつぶしを覚悟で師直を切りつけるのですが、それを成り立たせる師直像が印象的ですし、そこに持っていくまでの筋もよく出来ています。

夜の部を観劇しているから感じるのですが、前半の昼の部は、後半に備えてぐつぐつ煮込んでいます。
そして見どころは満載です。
師直が顔世への横恋慕がきっかけとなる、そして立場を使って判官を追い込む、また賄賂には弱い、もう人の醜さの塊です。でもそれが人です。
厳粛な切腹や葬儀の場面もあります。
歌舞伎ならではの殺陣もあります。
最後の勘平とおかるの仲睦まじさも人一面です。
面白さ詰まっていました。


  


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2025年03月25日

3月大歌舞伎【通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)】




五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
同    二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場
七段目 祇園一力茶屋の場
十一段目 高家表門討入りの場
同  奥庭泉水の場
同  炭部屋本懐の場
引揚げの場

溝口健二の「元禄忠臣蔵」をはじめ歌舞伎以外の演劇でも落語でも忠臣蔵は色々な切り口で多くの方々が鑑賞しています。ですからそれぞれに一家言の一つや二つはあるでしょう。
私もこれまでの忠臣蔵の鑑賞を楽しく、はたまた唸るような気分、また感傷的になったり、江戸時代に想いをはせたりしてきました。
それを踏まえて今回一番感じたのは、舞台を江戸ではなくて室町の鎌倉にし、役名も大星由良之助をはじめ皆変えていることを実感しました。
たかが芝居で、当時の江戸幕府にそこまで警戒することに腑に落ちることがなかったのです。
でもこの大歌舞伎では違いました。
塩谷(赤穂)浪士の忠誠は異常にも思えたのです。純粋です。一途です。それは討ち入りに加わりたい勘平や平右衛門だけでなく、彼らの家族までがです。もちろんこれまでの忠臣蔵でもそうであったのは間違いありません。
けれど娯楽と感動とを融合させた仇討、命を懸ける人たちを奨励をもしたしまうこの舞台は、危険極まりないとまで感じてしまいました。
これでは実名ではできないと思いましたが、同時に、実名ではないにしても明らかです。それを黙認していた江戸幕府を鷹揚であったとも強く感じました。
日本をはじめとしたかつての全体主義の国ではありえないだろうなとも鑑賞しながら考えてしまいました。
歌舞伎の力、底力の凄さが改めて身に染みました。
  


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2025年01月25日

【SPAC演劇】メナム河の日本人 今井朋彦 演出




山田長政の活躍を描く遠藤周作原作の演劇化です。
舞台は王宮と野外で、それを連想させるのが天井から吊るしたカーテンと微かな効果音です。想像させる巧みな舞台で、それを後押しするのが衣裳です。
物語は時代を感じさせる王位継承争いにキリスト教の布教が絡みます。
どちらも普遍的なテーマです。

劇は力強い会話劇で、舞台と衣裳で時間と空間を当時のタイの王国にさせて置いて。役者にその人物が乗り移ったように台詞が乗ります。
山田長政は野望があって成り上っていったけれど、それは一つの結果で、どう生きていくか、きっと常に模索していたのでしょう。
そしてそれは他の人物も同じで、はたま観劇している私の日常も同じです。
人が生きるということの普遍も描いている劇でした。

  


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2025年01月18日

【新国立劇場新春歌舞伎】




通し狂言 彦山権現誓助剣 四幕七場
(ひこさんごんげんちかいのすけだち)

見どころ満載です。
解りやすく順に順に繰り広げられる通し狂言で、筋の中に歌舞伎の歴史も感じます。
長い年月をかけて寝られてきたということをです。
立ち回り、舞台での仕掛け、驚かせる大道具、舞台変化の速さ等々、歌舞伎の真骨頂が多分に盛り込まれています。

仇討話ですが、そこに天下統一の明智光秀や豊臣秀吉のエピソードが入りますが、歌舞伎は娯楽として進化していっていることを痛感します。(現代のギャクも入っていました)

最後の大団円はお正月です。
またまた歌舞伎に嵌りそうです。
  


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2025年01月09日

はたらく細胞 2024日 武内英樹




私=脳は、もっともっと体を労わって感謝しないとダメです。
はたらく細胞は自分ではあるけれど脳は体の頑張りなんて当然として、そんなことはおかまいなしに好き勝手やっています。
その細胞が老化してくことを一番に怖れているのは脳です。
脳は自分勝手、体は献身、人の二面性は人そのものの中にも存在しています。
  


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2024年12月20日

侍タイムスリッパー 2023日 安田淳一





大きな括りはありきたりのタイムスリップものですが、侍が現代へということに絞っていて、それを活かした練られた脚本と、とても丁寧な造りで、楽しいし、感心します。そして最後の殺陣は素晴らしい、文句なしの良い映画です。

高坂(山口馬木也)が140年タイムスリップして現代に来て、それに戸惑う序盤から切られ役として今に馴染むのをコメディタッチで描きます。それが、今の日本の豊かさは先人たちの努力だと、大袈裟に押し付けないで高坂を通して語ります。
全体的に押し付けなく進むのが心地よいです。
そしてタイムスリップ前に敵同士で果し合いをしていた風見(冨家ノリマサ)が現れます。風見は30年前に来ていて切られ役から始まり今や大御所の大俳優という、この設定が随所に活かされます。

そんな二人は、斜陽になった時代劇を救うための映画作りに尽力し、そのクライマックスは真剣勝負になります。
この、時代劇を再び、も結構強く謳いたいということお使って、幕末に二人が藩の中での役割や、遺してきた過去の侍仲間への鎮魂を込めて、そして序盤に語られる豊かな日本になった工程を観る者に噛み締めてもらうように仕掛けられた真剣勝負です。
その殺陣は最大の見どころです。

無駄がなくリズミカルなのも良いし、紅一点の助監督約の優子(沙倉ゆうの)のキャラクター設定も絶妙です。
話題になったのが解ります。



  


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2024年12月12日

【SPAC演劇】象 EMMA 演出



余命間もない被爆者の「病人」とそれを見舞う被爆二世の「甥」、同じ被爆者であっても、立場も考えも生き方も、世間に対しての接し方も違います。
初演は1962年、当時の観客は生々しく観劇してことでしょう。
しかしこのプロットは人の生き方として起こる世間からの重力は普遍ですし、人の弱さや譲れないものを持つ性も普遍です。
この二人の話だけではなく、「通行人」二人のやり取りや、「医者」と「看護士」「妻」の立ち居振る舞いも日常に起こる光景です。
この劇は被爆という大きな代償がもたらした大きな社会の悲劇を裏側にして、生き方を説いているように感じました。

私は1962年生まれなので、終戦から17年で産まれました。たった17年でも戦後から遠く感じるのに今は79年経っています。この戯曲の被爆は若い観客にとって遠い存在になっていなければ良いことを祈りながら観劇しました。
  


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2024年12月11日

【12月大歌舞伎】




一、加賀鳶(かがとび)本郷木戸前勢揃いより赤門捕物ま
二、鷺娘(さぎむすめ)

加賀鳶は世話物として、話が凝っていたかなり寝られて面白い演目です。
最後のだんまりを長く使った捕り物は痛快です。

鷺娘は一人で30分を艶やかに身体能力も高く踊り切ります。演奏も見事。
人に恋した鳥獣が変化するというのはよくある話ですが、それほどに敵わぬ恋があったことが窺えます。また、叶わぬからこそ恋に焦がれてしまうのでしょう。
その心が痛いほどに伝ってきました。


  


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2024年11月07日

【SPAC演劇】イナバとナバホの白兎 宮城總 演出




3度目の上演です。
2016年が初演、2019年が二度目の公演で、今回3回目です。

この作品は、フランス国立ケ・ブランリー美術館の開館10周年の記念公演のために、SPACに創作依頼されて出来たものです。
創作のきっかけは、レヴィ=ストロースの最後の著作「月の裏側」に出てくる仮説です。

「因幡の白兎」をはじめとした日本の神話が第一部、アメリカ先住民ナバホ族の神話が第二部、この二つには繋がりがあり、もっと言えば世界に広がった関連ある神話の大本がアジアのどこかにあるだろいうというレヴィ=ストロースの仮設を、SPACがその大本を創作するという野望とも無謀ともいえる宮城さんのアイデアがこの演目のきっかけで、これをもって「クロード・レヴィ=ストロース劇場」のこけらおとしの上演に持っていったのが2016年です。
その当時の創作の模様をアフタートークでたっぷりと聞けました。
なにしろ本家本元へもっていく創作演劇の創作ですから、いつもの作り方とは異なり、本当に“無”から、まずは世界中の神話をスタックと俳優で調べあがるところからのスタートとのこと、そして感心したのは、レヴィ=ストロースの構造主義を演劇として具現化するということにも挑戦していたことでした。
種を蒔く、畝を作る、これらの普遍的な行為を演劇に落とし込むときにそれを、構造主義を取り入れたということで、重ねる言葉や重ねる音楽はその成果だったことに感動をも湧くアフタートークでした。

そして今回の演劇は、筋肉質になっていたという印象です。力強いパフォーマンスはそのままに、ひとつひとつの演技、ムーバーの立ち居振る舞いが、スピーカーの言葉が、そのシーンを想像させる力が強くなっているのです。

この3回目の上演は初回メンバーと顔ぶれがかなり異なっていましたが、この演劇の成り立ちと概念はしっかりと受け継がれています。それも素晴らしいです。





追伸
11/7は「立冬」です。二十四節気更新しました。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
干し芋のタツマ
二十四節気「立冬」の直接ページはこちら
立冬


  


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2024年10月27日

【グランシップ 文楽 2024】




【昼の部】 「二人三番叟」、「絵本太功記」~夕顔棚の段~尼ヶ崎の段
楽しい舞踊から始まり、明智光秀を主役とした時代ものです。
暴君信長を討つ光秀はやむに已まれず、そして秀吉はその光秀の心情を量るという戦国武将それぞれを称えるこの頃の社会がみてきます。
それを文楽は人形と浄瑠璃で表現するのですが、この劇のクライマックスの壮大さは素晴らしかったです。

【夕の部】 「近頃河原の達引」~四条河原の段~堀川猿廻しの段
こちらは世話物です。まず理不尽な行いが起こるのですが、お決まりではありますが、じっくり見える演出で引き込まれます。
猿回しの団は、題名通りとても楽しい猿回しがあります。その前には人形と三味線が一体となったこちらも楽しい芸があります。こられも文楽ならではです。

今回の演目で、義太夫語りと三味線が場面ごとにかなり大胆にかつ繊細に演じ分けていることを今まで以上に感じました。少しは文楽を、浄瑠璃の見事さが解るようになってきたようで嬉しいです。

  


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