2016年07月03日

暗殺の森 1970伊/仏/西独 ベルナルド・ベルトルッチ

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自分の本性に怖れる男は、違う自分を目指したのだけれども、それが脆くも崩れさってしまった。
第二次大戦の渦中に普通に生きたいと願った男の生き様を通して、人が抱く普通とはを語っています。

マルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は精神を病んでいる父と情夫を持つ退廃的な母の血を受け継いでいることと、少年の頃にファシストのリノ(ピエール・クレマンティ)という男に性的な虐待を受けそれから逃れるためにリノを殺害したトラウマを持っています。それが自分は普通ではないという怖れになり奥深く根付いています。
それから逃れるために普通を目指すのですが、その道はファシストとして生きることです。

およそ知的に釣り合わない美しい妻ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)との新婚旅行を装い、ファシストとしての使命を遂行するマルチェロ、その使命はかつての恩師カドリ(エンツォ・タラシオ)の暗殺の準備でした。
カドリには妖艶な妻アンナ(ドミニク・サンダ)がいます。マルチェロを疑いながらも二人は惹かれあいます。

そして遂に暗殺へと、そこにはカドリ一人に段取りをしたはずだったのに、アンナもいます。当然のごとく二人は暗殺されます。

物語はそれから5年後の1943年7月25日、ムッソリーニ退陣の日に飛びます。
マルチェロが盲目のファシスト仲間と街を彷徨っている時、なんとリノに出会います。彼を殺害した記憶は、マルチェロが、虐待から逃れるため、リノを憎むあまりの作った記憶だったのです。
普通を望んでファシストとして生きたこと自体が否定されます。それ以上にもうマルチェロは自分は正常なのか異常なのかが解らないのです。さらに自分が生きた証ももう虚であることに絶望します。


自分は正常か異常か、自分は主体的なのか、人はそれに対して確固たるものを持ちえない存在だとした映画です。


ヒロイン二人の別タイプの美しさも堪能できる作品です。妖艶で退廃的で高貴なドミニク・サンダ(当時19歳にはとてもみえません)、綺麗な目鼻立ちで美しいのにコケティッシュなステファニア・サンドレッリ(新婚の彼女と数年後の彼女の雰囲気が別ものなのも良い演技でした)、二人のダンスジーンは出色です。


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