2016年04月05日

野火 2014日 塚本晋也

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塚本晋也監督の執念を感じます。
現実にあった地獄絵図が再現されています。
フィリピンの美しい風景、自然と、その森の中で飢えと恐怖で狂気一歩手前の主人公が見た、体験した狂気の沙汰がフィルムに収められています。

太平洋戦争末期の、かろうじて軍として機能していた頃から、完全に軍のていをなさなくなり、ゾンビのように森を彷徨う日本兵達、一秒後に死んでもおかしくない、今発狂しても何も不思議ではない、生きていることが地獄、いや生きているのかいないのかさえも自覚できていない、そんなもう人らしくなんてことが全くない中で息をしているしかない、日本兵達の姿です。

正直、この時代に生まれていなくて良かったと、映像を見て安堵する自分がいます。
これが私達の親世代が体験したことであることだとか、だから、先人に感謝するだとか、
戦争に対しての怒りだとか、そんな感情よりも、この世界に投げ出されたら、唯一持っている手りゅう弾で自決する権利を私は行使できるだろうか?
その方が絶対に楽という現実をしっかりと映像化しています。

映像は時々、息をのむほどの美しい風景を写します。
最後まで見てもらう配慮のように感じます。
それほどまでに、あまりにも凄惨な映像なのです。
でもそれが真実であったのだから見ていて苦しいのです。

主人公の目線で描かれる映像、でもとてもではないけれど、多分主人公が感じたことのほんの一端しか私は汲めていません。
あたりまえです。安全で温かいところから見ているだけですから。
でも見なければなりません。こんな間違いがまた起こることを防ぐためにです。











追伸
4/4は「清明」でした。二十四節気更新しました。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
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清明


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