2015年11月16日

真夜中のゆりかご 2014丁 スサンネ・ビア

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人はここを攻められたら、落ちてしまうボタンがあるのです。

何があっても決して取り乱れることがない、倫理的な主人公、刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)は妻アナ(マリア・ボネヴィー)との間にアレクサンダーという生まれたばかりの赤ん坊がいます。ますます幸せになっていく家族です。

ある時、アンドレアスと相棒のシモン(ウルリク・トムセン)は、通報によりアパートの一室に入ると、前科者のトリスタン(ニコライ・リー・コス)に虐待される情婦サネ(リッケ・マイ・アナスン)とともに、糞尿まみれの赤ん坊ソーフスを見つけます。

ある夜、あろうことかアレクサンダーが眠っている間に亡くなってしまいます。半狂乱になるアナ。
アナはわが子の死を受け入れることを拒否します。アレクサンダーを私から取り上げたら自殺する。本当にやりかねないアナを、なんとか眠らせたアンドレアス、シモンに助けを求めますが、シモンは飲みつぶれていました。
夜中に死んでしまったアレクサンダーと彷徨うアンドレアスに悪魔が囁いたのか、
アナに赤ん坊を授けることをします。なんと、アレクサンダーとソーフスを交換してしまうのです。

アナは代わりの子が出来て落ち着いたかに見えましたが、情緒は安定せず、投身自殺してしまいます。結局、妻も子も失ったアンドレアスは失意の底です。
それと並行して、トリスタンは、ソーフスは死んだと思い込み、このままでは殺人罪に問われると遺体遺棄し、誘拐されたと狂言します。
警察に尋問されるトリスタンとサネ。
サネは一環して遺体はソーフスではない。ソーフスはどこかにいると主張します。


アレクサンダーが亡くなってから、俄然サスペンスとしての面白さ、先が読めない展開になります。
そして、虐待していたのは実は?という大ドンデン返しもあり、上質サスペンスです。

落ち着くところに落ち着くのですが、母が子を失う喪失に勝る喪失はないことを、サネで改めて痛感します。

そして、あれほど何事にも冷静に判断、対処、行動できるアンドレアスが、妻まで失いそうになると、一転、信じられない判断、行動を起こすのです。
そのやってはいけないことと解りつつやってしまう行動に、人は屁理屈をこね回します。
「あの夫婦からソーフスを救うことになる」「は、このままでは虐待されて殺されてしまう」
彼はアナがすべてだったのです。

倫理とは、法とは、愛とは、そして感情のコントロールってどこまでやれているのか、それらを考えてしまう内容でした。


冒頭、相棒のシモンは、女房子供に捨てられて、飲んだくれ、という男でしたが、最後は名探偵ぶりを発揮。これも良かったです。


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