2015年08月12日

あん 2015 日/仏/独 河瀬直美

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社会からはみ出してしまった男の千太郎(永瀬正敏)が、
社会から存在を消されてしまった老女の徳江(樹木希林)から、
生きることを受け継ぐ映画です。

若い頃、酒の勢いで罪をつくった千太郎は、その弁償と、服役中に喪った母、母に何も与えることが出来なかった自己嫌悪から、ただオーナーの意向に添うだけの、どこにでもあるどら焼き屋の店長として、人形のような日常を繰り返していました。
そこに現れたのが徳江です。
徳江は餡作りの名人で、徳江の餡が評判になり、どら焼き屋は繁盛します。
けれどそれも束の間、徳江がハンセン病患者だったことから、世間からどら焼き屋は厭われてしまいます。
生き甲斐になったどら焼き屋から身を引く徳江です。

千太郎に生きる喜びを教えてくれた徳江を救うことも、またも大事な人を救うことが出来なかった千太郎です。

店の常連客だった中学生のワカナ(内田伽羅)の後押しがあり、徳江の施設を訪れると、徳江の元気な姿に励まされ、もう一度頑張る決心をする千太郎ですが、上手くいきません。
そこでもう一度ワカナと徳江を訪れますが、徳江は亡き人でした。
でも徳江の最後の言葉は千太郎に生きる意義を求めさせるに足るものでした・・・。


社会からはみ出た千太郎の悲しみを一番汲み取ったのが、社会に存在を許されない徳江でした。
この物語は、人の存在を問う映画です。
社会があり、他者があり、そこではじめて自分の存在が現れるのが人です。
けれど、その前に自らの生をどこまで自分が自分に問うか?
そこがあって初めて、人とのつながりの中の自己を見ることができる、
それを説いてくれた映画でした。


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