2014年08月12日
グラマ島の誘惑 1959日 川島雄三

喜劇ではありますが、川島雄三なりの反戦映画です。
ちょっと物語として破綻しているところが惜しいですが、気持ちは十分に伝わってきます。
設定が面白いというか微妙です。
戦中、13人が無人島(グラマ島)で暮らすことになるのですが、そのメンバーは、皇族の兄弟(為久大佐と為永大尉)そして二人を補佐するバリバリの軍人の兵藤中佐、そして現地人のふりをしている脱走兵のウルメル、後は全員女性で、従軍慰安婦が6名、報道班で詩人のよし子、報道班で画家のすみ子、グラマ島にはかつて日本の基地がありそこで未亡人になった とみ子です。
為久は食べることと女のことしか頭にありません。為永は生真面目ですが同じく生活力はありません。兵藤は皇族二人には従順ですが、女達の前では威張りちらします。
皇族や軍人には無条件に従うものだという教育をされてきた慰安婦達は、3人の男達に仕えることに何の疑問も持ちません。
とみ子は元々グラマ島に住んでいましたから、ウルメルの援助を受けながら、軍人3人と慰安婦達とは距離を置きます。報道班の二人の女性は男達に反抗的なので厄介者扱いされます。
そんな戦前の軍事システムが、二人の女性の目論見で(慰安婦達に今の生活はあまりにも理不尽であることを説いて)女性全員で反乱を起こし、島を民主社会にします。このあたりがこの映画の一つのテーマです。
でも川島演出は一筋縄では民主化を成功させません。一度は鎮圧された男共は武器を手にして女性を抑えることに成功します。これもかなりブラックな暗喩です。
その後武器はウルメルが奪ってまた民衆主義が機能して6年の月日が流れます。島の近くでは水爆実験があります。それと同時に終戦していたことがわかりアメリカ軍に助けられて、日本編になります。
日本編でも風刺が続きます。経済的に復興している日本で沖縄返還の運動も行われいますし、皇太子殿下の結婚にも浮かれいます。
その中でグラマ島から帰ってきた為久は家族と恋人に捨てられ、為永は事業が上手くいかない、すみ子は「グラマ島の悲劇」という本を執筆しベストセラー作家になりますが、かつての仲間からは反感を買います。慰安婦達は沖縄で商売しようとして逮捕されます。
なんだかグラマ島の生活の方が幸せだったように映ります。
そのグラマ島も水爆実験の場になってしまいます。そこでラスト。
非常に辛辣な隠れメッセージに満ちている映画です。
ただ当初ブラッックな笑いだったのが笑いに笑えない感じになります。
そして、女性達の描かれ方が面白いのですが、それと主題が合っていないような感じでまとまりがない印象になります。
しかしながらこれも川島雄三でなければ撮れない映画だということを感じる個性的な作品であることは間違いありません。
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Posted by いもたつ at 07:37│Comments(0)
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