2014年07月16日

さらば、わが愛/覇王別姫 1993香 チェン・カイコー

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中国の伝統芸能の京劇の二人のスターとその一人の妻の3人の人生を通して、
中国の近代史を語っている大河ドラマです。
3時間という長い尺からも推測できましたが、
京劇を再現している舞台、衣装が素晴らしい、それだけでなく、
清朝末期から、日本軍の占領時代、戦後の国民党の時代から共産党政権になり、文化大革命までの中国を丁寧に再現している大作です。

幼少時代に知り合った二人の男はやがて京劇界を代表する役者に成長します。
小楼と蝶衣です。女形の蝶衣は小楼を兄と慕い、友情を超えて愛情を持つようになります。
そこに現れた菊仙は小楼と相思相愛で妻になり、ここから3人の三角関係が始まります。

二人の代表作が覇王別姫で、この劇のクライマックスは、四面楚歌で絶望になった楚王のために最期まで添い遂げる虞姫の愛の舞と自決です。

どんな政権になっても京劇の舞台は必要とされますが、二人の思うようにはできなくなります。
それがピークに達したのが文化大革命で、京劇も破壊されます。

京劇という芸術でしか生きられない二人の運命は翻弄されます。

多くのエピソードがありますが、印象的なのは、蝶衣が阿片に溺れるところです。
蝶衣は小楼への愛を表現できるのは舞台の上での虞姫の時だけでした。現実では菊仙がいます。
だから蝶衣は阿片に頼り、舞台を現実にすり替えようとします。
虞姫になりきっている蝶衣の美しさは男とは思えません。女以上の美しさです。
その蝶衣に現実は残酷なのです。


映画は文化大革命が終わり、京劇が再び脚光を浴びる時代を映し、すぐに1934年に飛びます。そして順に時代がくだり、最初のシーンに戻ります。
そのラストは、蝶衣が虞姫に完全になりきり、楚王(小楼)の前で剣の舞をして自決するところで終わります。

この前段階は文化大革命で、楚王がそうであったかのように小楼が共産党員につるし上げられて四面楚歌になるシーンです。

この物語は劇中劇を演じる役者に現実を重ねながら、中国を語るという脚本で、大きく揺れた3人と大きく動いた中国が重なり見応えがありました。


蝶衣を演じたのは、幼少時代、少年時代、そして大人になってからの3人の俳優ですが、幼少時代、少年時代の2人ともに中性的で女形の雰囲気が漂っていました。
そして圧巻はレスリー・チャンです。
妖艶さ、美しさ、舞台上での映えある様にはうっとりしました。


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