2014年06月25日

スーサイド・ショップ 2012仏/白/加

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ブラックなミュージカルアニメです。

未来に希望が見出せない街が舞台で、街の人びとは疲弊し、生きることに絶望しています。
自殺が絶えないことから公共の場では禁止、罰金です。未遂に終わると自分が、成功した場合は遺族が罰金を支払うのです。
暗黙のうちに隠れ自殺が推奨されます。
街には「自殺用品店」があり、そんな事情からその店(スーサイド・ショップ)は流行っています。
その家族が主人公です。

この店は、自殺用品なら何でも揃う代々続く老舗です。(長い期間、流行っているということ自体皮肉です)
高級品からお買い得品まで品揃えは充実、客の要望に応えられない物はありません。
安楽にすぐに死ぬ=今の絶望からすぐに解放してくれるありがたい店です。
そして未遂に終わったら返金もしてくれます。

街全体に自殺志願者が溢れていますから、繁盛しています。
そして何故か家族4人とも(夫婦と兄と妹)生きていたくない思想の持ち主です。
そこに赤ん坊が生まれます。
この赤ん坊が家族が望まなかった男の子で、生きる活力が溢れています。
成長すると学校の仲間を集めて、明るい街にしようという優等生です。
そのためには、実家の自殺用品店を変えなくちゃとなり、
店を滅茶苦茶にする悪戯をします。
それに怒った父親が息子を死なせようとしますが、返り討ちに合い、
家族全員が改心。
幸せを売るクレープ屋になりました。おしまい。

ということですが、一筋縄にはいきません。
もちろん、明るく生きよう!ということを高々と歌い上げますが、
皮肉が込められています。

冒頭から世の中に希望はないんだよ。のメッセージのオンパレード、
健気な息子の想いが伝わり、妹(生まれた息子の姉)が明るくなっていったりしますが、
基本は暗い家族です。
突然に明るくなることについていけないのですが、それは大筋ということでしょう。

実は、明るい店になっても自殺志願者はなくならない。
そんなシーンもありますし、
こんなに簡単に変わるわけがないという程の変わりようなところが、
皮肉に見えます。


自殺用品を売っているのですから、売り手としては複雑でしょう。
絶望している人を楽にしてやることができる仕事で、未遂に終わる位ならいっそのこと苦しまずにあの世へ送るのが、代々続いているこの店の役割とはいえ、
自殺幇助であることは間違いありませんから、精神が病んでしまいます。
そこへそんなことはやめようという無邪気な息子が誕生しました。
今まで暗く生きることが当たり前の家族にとって驚きというところです。
絶望の街、いかにもそれを現わしてる絵(登場人物達)、こういうブラックな設定ですが、ミュージカルで進むので見せきってしまいます。

家族の名前も、
父親はミシマ、日の丸針巻きで日本刀を振るいます。もちろん三島由紀夫を重ねています。
そして妹の名もマリリンです。裸で踊るシーンもあります。
母親(ルクレス)と兄(ヴァンサン)と息子(アラン)も自殺した人物と重ねているようです。
それらを含めて、演出がとても上手いなと思いました。


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