2014年06月19日

時代屋の女房 1983日 森崎東

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片想いを描いたファンタジーのようでした。


主人公の安さんは時代屋という古道具屋を営んでいます。
ある日そこに、真弓という美女が捨て猫と現れます。
真弓は時代屋に居つくのですが、苗字も素性も一切が謎です。
しかも時折ふらっといなくなり、数日経つと何事もなかったように笑顔で帰ってきます。

ネコは飼い主に媚びを売らないで、
餌と宿はもらうけれど、自由は奪われない、
そして、可愛がってもらいたい時は、ゴロゴロ言いながら飼い主のところに来る。
真弓もそんな感じです。

また真弓は、男なら誰しも惹きつけられてしまう女性です。
美人であることもさることながら、一緒に居る時は可愛くてしかたがない、
そして本心から自分のことを想ってくれていると解る女性です。

でもふらっと居なくなる。
物語はミステリアスな展開になります。

私は真弓は安さんの幻影なのかとも思いました。
そしてこの映画自体がファンタジーのようにも感じました。
安さんはじめ、近所付き合いをしている人達の描き方からです。

製作当時の生活感が盛り込まれているのですが、
どこか生きる大変さは意識的に削がれているような感じだからです。

へんな言い方をすると、安さんも含めて食べていけるのかなという感じです。
(津川雅彦が喫茶店のマスターでしたが、その店は倒産してしまいましたが)

また、真弓が今度こそ帰ってこないという感じになると、
(夏目雅子が二役で)美郷という女性が現れます。
そして美郷も安さんに恋します。

安さんは、父親とは断絶しています。
母親ともあまり上手くいっていない少年時代だったようです。
そしてたったひとりで時代屋を営んでいました。

そんな安さんの幻想のような物語です。

なぜ真弓が現れたのか?
安さんというようりも男が描く理想の女性でした。
けれどその女性は安さんの下にずっと仕えることはありません。
その方が真実味があります。
だからこの物語は、ひと時の夢をみてしまうロマンチックな男を描いています。

なんだかんだ言っても男ってそんなものです。


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