2013年12月22日

炎628 1985ソ連 エレム・クリモフ

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1943年白ロシア(現ベラルーシ)は、ドイツ軍に侵攻されます。
それを迎え撃つパルチザンに15歳位の少年が兵として志願します。
映画はこの少年兵の目線で進みます。
あくまでソ連目線ですが、戦争がもたらす真実を映像で再現しています。

少年は自軍が壊滅すると、村に戻ります。
家族は少年が志願したことを理由に惨殺されていました。
この時少年の目には、殺されている双子の妹は、倒れた人形として写ります。
この映画では少年が見たくないものを見た(聞いた)時に脳が勝手に映像と音を、すり替えてしまう表現を使っています。これにより観客は少年の体験に寄り添うことになります。

狂いそうで狂えない少年の第一の試練ですが、
ここで留まることがないのがこの映画です。
その後、村人のために食料を奪いに行く途中に仲間だけ殺されること、
そしてクライマックスでは、少年を匿ってくれた村そのものが、
村人とともに焼かれる体験もします。
少年は奇跡的に生還しますが、終始幾度も生死の境目に漂うしかなかった少年は、
老人のような皴ができていました。


ソ連映画ですからナチスドイツが祖国にやった仕打ちを描きます。
第三者から見てもその行為は目を覆うばかりです。
怖くなったのは反戦映画でありのですが、
ロシア(ソ連)の人達がこの映画を観たらドイツ人を許せなくなりそうなほどの映像だったことです。
欧州はそれを乗り越えてEUを進めていますから杞憂でしょうけれど。


この映画は人の狂気を赤裸々にしています。
平気でどころか、狂喜しながら村人を焼き討ちにするドイツ兵達、
略奪、強姦、暴力、弱いものをいたぶります。
狂喜に逃げるかのようです。

しかし、それを受ける側は正気ではいられません。
少年の精神が病んでいくのが、
姿からと、少年の気持ちになるような演出から体感してしまうこと想像できるのですが、
“実はこんなもんじゃない”ということも同時に大きく心に訴えてきます。

戦争は一瞬にしてこれまでの人生を無意味にするかのように、人々を絶望に落とします。
根も葉もない子供(幼児)は生まれたことに意味をがなかったかのごとく無残に残酷な仕打ちを受けます。
オセロの白と黒が変わるように、一瞬です。
そしてそれはドイツ兵も同じです。

ラスト村を焼き払ったドイツ軍は、パルチザンの逆襲に遭います。
将校達は捉えられます。
一番の親玉の大佐は命乞いをします。
それを潔しとしない青年将校は、銃を向けられながらも、主張します。
「共産主義は下等だ。だから根絶やしにされるのだ」
「子供から全てがはじまりなる。生かしておけない」
「貴様らの民族には未来はない」

戦争の始まりは積もり積もった多くの要因ですが、
それを遂行するために論理があとから付け足されます。
そして正当化されてしまいます。
戦争により、人の悪が育ってしまうことをこの映画でも痛いほど確認できてしまいます。





追伸
12/22は「冬至」です。二十四節気更新しました。
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