2013年12月14日

武士の献立 2013日 朝原雄三

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正の循環の物語です。

恵まれた環境、そして、自分を鍛える心がけを身につけた者、
それが主人公の夫です。

主人公は、12歳で天涯孤独になりました。
でも彼女には世の中を渡れるべく、
亡き母から授かった超一流の料理の腕がありました。
彼女(主人公)は、その才能と努力で得た料理の腕を
利己ではなく利他に活かすことが身についていました。
母代わりの愛も受けていたからです。
主人公は12歳までの実母の愛と、
12歳からの母代わりの愛を受けていて、
それを開花させる機会を得ました。
この映画は、その部分を見せる映画です。

主人公の夫は、藩に奉公を信条とする由緒正しい武家の次男坊です。
家は包丁侍といわれる、一見武士の本道からは外れる家系です。
夫はそこに引っかかりを持っていました。
(これにまつわる自己評価の決めつけがあり、それがこの物語を進展させます)

『滅私』が武士に必要不可欠の時代、
若き夫はそれに従うことを良しとしません。
大体が武士は戦う者という幻想を背負っています。
若気の至りであってもそれを続けることは、
妻(主人公)にとっても、家(両親)にとっても、
『人でなし』となる行為です
でもそれには気がつかない、
だから妻が身を捨てて夫に抗します。

その姿は、不幸から転換できた彼女の信条がそのまま現れた姿です。

時は和平と成った江戸時代です。
でも常に水面下では争いはあります。
これも世の常です。

だから若き夫は、
環境に踊らされてしまいます。
派手なモノに本質を見出せなくなっってしまうのです。
家の生業の包丁侍の価値を見出せないのです。

それに目覚めさせたのが主人公です。

不幸に落ちかけた彼女は、
幸運にも出会った母代わりに救われました。
でも彼女にはそれを受け入れる資質もあったのです。
その恩返しのように彼女は夫に尽くしました。
わがままな塊の夫も、ついに妻の想いにしたたか参るかのように、
彼女の無垢の気持ちを受け入れる覚悟を持ちます。

そういう物語でした。

世知辛い世の中でも正の循環は機能する。
それを声高に示していました。


ちょっと違う視点の一言、
江戸を再現したセットもロケも良かったです。
物語の背景であり、物語の影の主役の料理もリアリティあり、
そして、主人公はじめ登場人物(特に女性)の衣装も
とても良かったです。


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