2013年07月19日

西鶴一代女 1952 溝口健二

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情け容赦なく女が堕ちる様を描く壮絶な映画です。
性という制約の中で考えうる女の不幸を、
女がその状況下で遭遇する新たな試練を、
映像化しています。

封建社会下の公家の一員の娘が、
大名の妾として世継ぎを生みながら、
乞食のような娼婦にまで堕ちますが、
その前後とその最中の葛藤を田中絹代が見事に演じます。


純愛から結ばれようとした男とは、身分の違いから不義とされ、
男は打ち首、女の一家は公家から庶民へ。

運よく大名の妾になり世継ぎを生むも、
大名に尽くしたことが仇となり、保身の重役にお家から追い出されます。

商才もなく、甲斐性がない父親に郭に売られ、
もう一歩で身受けされそうになると、その男は詐欺師。

ねんが明けて商家に勤めるも、
遊女の過去がバレて弄ばれる羽目に。

その後、甲斐性も思いやりもある男が現れ、ようやく今までの苦労が報われて、
こんなに幸せになってもよいかの絶頂になりますが、
夫は物取りに殺されます。

乞食の娼婦になり絶望の中、
世継ぎのあの子が大名になり、お屋敷に招かれるも、
女の過去を赦さないお家は子供と引き離そうとします。
女はなんとか逃れ、巡礼者として生きることを決める。

ありとあらゆる不幸が襲いました。


女を不幸にするきっかけは、いつも男の我儘です。
封建社会だったことも割り引けません。
“表向きは女のため”の男もしかりです。
(唯一殺された夫を除いて)
愛した女であっても、血を分けた娘であっても、世継ぎを生んだ母であっても、
他人の痛みは感じませんから、自分の心の負い目が薄れるまで辛抱すれば、
“自分さえ良い方が良い”のが人間です。
綺麗ごとを言ってもそれが本性です。

人が人らしくいるためには安全地帯をいつも作って
そこにいるようにしなければすぐに堕ちます。

そしてこの映画は、
こういう現実があったことを淡々と語った物語です。


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