2024年02月29日

PERFECT DAYS 2023日/独 ヴィム・ヴェンダース




主人公の平山(役所浩司)にあまりにも共感します。そして、その日常は私が描こうとしているモノにとても近いです。

早朝、向かいの寺の掃き掃除の音で目覚めて、極めて几帳面に身なりを整えて仕事にいく平山、その仕事は誰もやりたがらない公共トイレの掃除です。それを一生懸命に磨く平山。
昼休みもいつも同じ、公園にいき木漏れ日を撮影、時に苗木があるとそれを持ち帰り大事に育てます。銭湯が開く時刻にいき一番風呂を浴び、昭和の頃から続く駅地下の一杯飲み屋で酒と食事も毎日のこと。帰宅すると寝るまで読書を楽しみます。もう一つ平山の趣味は古い曲を当時のカセットテープで楽しむことです。
休日は部屋の掃除と洗濯、映した写真の現像、古本屋で次に読む本を選び、歌が上手いママ(石川さゆり)の店の常連客で、いつもより少し贅沢な酒盛りをします。

淡々とした毎日ですが、時に波風が起こります。同僚(柄本時生)のイザコザに巻き込まれたり、トイレで幼児の迷子に出会ったり、同じくトイレで見知らぬ人と五目並べをしたり、そしてもっと大きなイザコザは、何年もあったことがない姪っ子ニコ(中野有紗)が家出してきて数日一緒に過ごすのです。(ここで彼の過去が垣間見れます、裕福な家庭で育ち、親と折り合いがつかなく、底辺に近い今の仕事と生活は、彼が望んだことだと)

平山は他人と程よい距離を置きます。でもその人柄の良さは滲み出ていますから、皆から好かれます。(先頭の番台や常連客、居酒屋の店主、古本屋の店主、歌が上手いママ、よく合うホームレス(田中泯)(言葉を交わさないが昼休みの公園のOLとも心が通じている)等々)

平山は損得ばかりを追いません。トイレ掃除もそこまでやるかという気持ちが込められています。充実した日常を過ごすことで充実を得ることに満足をしています。
けれどこれがいつまでも続くとも思っていません。でも続けることに精進します。

ほとんど無口な平山が、ニコの前では彼なりに饒舌になります。そしてニコを迎えに来た何年もあっていない妹(麻生祐未)に親の死が近いことを告げられると、合いにはいかないと頑なですが涙を流します。平山も聖人君主ではなく人の子なのです。

ごくごく限られた人だけと触れ合い、親族ともほぼ交信しない、けれど、これまで生きてきた情があります。この生き様にもすごく共感します。

物語はお伽話のようでもあります。それは映画で語りたいことを優先したからです。とても良い映画でした。

そして、カメラ、ロケーション、キャスティングに唸らされました。



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Posted by いもたつ at 09:00│Comments(0)いもたつLife
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