2021年12月29日

【spac演劇】夢と錯乱 宮城聰 演出




フランスの演出家クロード・レジ氏の最後の作品として2018年に上演された「夢と錯乱」を、亡くなったレジ氏に捧げて宮城さんが焼き直したのが、この「夢と錯乱」です。
舞台は前回同様の楕円堂。この演目はここ以外では考えられません。

このオマージュ作品、一番の違いはやはりフランス語字幕と、主演で独り舞台の美加里の日本語です。台詞は詩の朗読ですから日本語の方が分があります。
それを最大限に活かすのが美加里で、朗読の緩急と感情移入、そして優れた身体能力での表現は闇の中でも凄みが解ります。

レジ作品は、静でしたが、この作品は動が取り入れられています。
美加里の動きもそうですが、レジ作品ではかなり控えめだった照明と音響で攻めてくるところです。これはやはり美加里の演技があるからでしょう。

内容は暗いです。「夢と錯乱」の原作者のトラークルの分身が舞台でのたうちまわります。
美加里演じる分身は絶望をこれでもか、これでもかと訴えてきます。
そしてトラークルが絶望の中で息苦しく生きる様が演出されます。それは日常、生い立ち、大人になってからの人間関係、そしてラストは第一次大戦での苦悩です。
トラークルののたうち回る様で、レジ氏も宮城さんも何を訴えたかのかを考えます。

それは多分、人間の本質だからでしょう。
私たちは私たちの本質をオブラートに包んで日常を過ごすことが習い性になっています。トラークルはそれをしなかった。できなかったのかもしれません。でもその生き方は凡人とはかけ離れた凄みがあったはずです。
レジ氏と宮城さんの狙いはそれが正解ではないでしょうけれど、いくらかかすっているのではないでしょうか。



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