2012年03月14日
浮雲 1955日 成瀬巳喜男

浮雲の高峰秀子は、男には絶対にわからない女性そのものです。
それを描いたのだから、そこが成瀬巳喜男最高峰と言われる一因でしょう。
まず高峰秀子さんから。
男にはわからない女を演じますが、
理解出来ない情念を、多くのシーンの中で、
その時の森雅之と会う喜びを潜めた悲哀を演じます。
不世出の女優はここでも本領発揮です。
それを受ける森雅之も相当なものです。
浮雲という話は、
自分の器量を超えたことまで、
出来ないことを知った上でそれを認めようとしないダメ男が、
無意識に罪を作り、
高峰秀子演じる女が、そこから生じる不幸を背負う物語です。
終始一貫ドロドロした二人のやりとりがスクリーンを埋めます。
特異に見える二人は、特異ではないところが味噌です。
所詮だいたいが、男も女も世間の中で生きています。
世間がみせてくれた夢の中で生きながらえている。
かもしれないというのが鑑賞中の感想です。
二人のやりとりは繰り返すばかりです。
最後を迎えるまで。
その底流には、今の生活の真実を描いているように思わずにはいられません。
人は死ぬまで日常です。
それまで何も起こらないのです。
それが真実という成瀬イズムを感じました。