2023年03月30日

【3月大歌舞伎】髑髏尼/夕霧 伊左衛門 廓文章 吉田屋




髑髏尼は、新歌舞伎というジャンルになるそうで、その通り現代劇にかなり近い演出でした。それでも歌舞伎ならではの舞台、衣装です。物語も歌舞伎らしく源氏と平家にまつわるもの、新中納言局が、平重衝との間の忘れ形見の髑髏を常に抱えていることから髑髏尼と呼ばれているけれど、寺守の七兵衛という醜い男に恋嗅がれています。
シチュエーションからしてゾクゾクし、案の定に悲劇です。その悲劇は情念が巻き起こしていて、そこには昔の日本人の美徳を感じる部隊です。

夕霧はダメ若旦那 伊左衛門と絶世の花魁 夕霧との廓話で、夕霧の衣装が艶やかでまた、コミカルな芝居です。
ハッピーエンドは良いのですが、伊左衛門のその後が気になります。
登場人物に、吉田屋の主人が出てくるのですが、金の切れ目が縁の切れ目にしなかったことから、吉田屋には福が来ます。世の中上手くできています。
  


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2023年03月23日

【SPAC演劇】人形の家 宮城總 演出




ノーラが“ねばならない”で生きてしまう超自我に支配されていたことを身に染みてしまい、ヘルメルに言う台詞、「3人の子供たちは人形で遊び、私は子供たちと遊び、あなた(ヘルメル)は私と遊んでいた」。
ではヘルメルは誰に遊ばれていたのか、この劇では戦前の日本が舞台ですから、当時の社会を支配ししてた大日本帝国軍ということになるのでしょう。

いつも社会は、生きやすくするために“ねばならない”をいつの間にかたくさん我々に植え付けます。それは秩序のため、経済のため等々、多分それで我々が多くの恩恵を受けているし、安全も確保されていることでしょう。

ではその“生きやすさ”はその時代時代で誰が何のために決めているのか?
歴史はそれが機能しなくなった節目を、例えば徳川政権が、例えば明治政府が、例えば大日本帝国の敗戦が教えてくれます。

このspac版人形の家は、また日本が今後どこに向かうのかに“盲目にならない”ことを声高に伝えているようでした。


  


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2023年03月17日

日本の名句・名歌を読みかえす 高橋順子 著




誰もが知る名句・名歌が美しい背景に乗せられていて、その句の背景と作家の生い立ちが解説されています。
句ができるまでには、その作家が歩んできた人生がある訳でそれはどちらかと言えば苦悩です。だから名句は多くの共感を呼ぶのでしょうし、普遍でもあります。

それたさらっとした感じで紹介されていることで、様々な情景が浮かびます。
同時に日本語の良さも改めて認識できました。

  


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2023年03月15日

【シネマ歌舞伎】二人藤娘/日本振袖始




生観劇とシネマ歌舞伎の違いは、役者を衣裳をアップで観れるところです。この演目二つはそれがあることで十二分にシネマ歌舞の価値ありです。

二人藤娘は、坂東玉三郎さん、中村七之助さんが美しい。うっとりします。
打って変わって日本振袖始では坂東玉三郎さんが醜い八岐大蛇になります。そして豪快でもあります。それに立ち向かスサノヲの尊の中村勘九郎さんが格好よい。立ち回りも迫力ありでした。

冒頭では坂東玉三郎さんの二つの演目の解説が入りました。これもシネマ歌舞伎ならではでした。
  


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2023年02月19日

【SPAC演劇】人形の家 宮城總 演出




同じイプセン原作の「ペールギュント」のspac演劇(宮城總演出)の舞台は、オセロ盤を用いていますが、この「人形の家」でもその側はそのままに、それをパズルとしています。
この劇は1935年の日本に置き換えられていますから、パズルのピースは当時の家庭内の家具等になっています。
それが少しずつ壊れていく、それはノーラ自身であり、ノーラとヘルメルとの関係であり、この家庭でもあります。

ヘルメルは最低の男です。自分の保身に全精力を傾けているような男です。ノーラへの愛し方も、経済的に十分なら、優しければ、社会的な地位があれば、それで必要十分条件が満たされてるはずだろ、という愛し方であり、ヘルメルはそれに何の疑いも持っていません。
ノーラもそれが愛され方の当たり前で自分は幸せと心から満足していました。
この劇で繰り広げられる3日がなければです。

ノーラは自分自身の存在そのものが尊重されていなかったことに気付いてしまった。ヘルメルの愛し方はノーラそのものではなく、ノーラが自分の保護の下で自分の思う通りのことをそつなくこなす、そして自分を含めた子供たちの良き妻・母であることに対して、これ上ない女性である、愛する対象であるとしていたのです。
二人共疑うことがない植え付けられた価値観で生きてきたのですが、ノーラだけはそれが幻想だったことを身に染みてしまったのです。ノーラは家を出てこれから苦難をたくさん迎えるでしょう。でもなぜこの世に授かったかは揺るがないのではないでしょうか。

でもこれを観劇して一番怖かったのは、ヘウrメルの最低の行為に私が共感できてしまうこと、ヘルメルの気持ちが解ってしまうことです。最愛の妻ですらその存在を愛おしく想っていないのはヘルメルと変わらないではないかと愕然としました。
植え付けられた価値観なんか糞喰らえを常に嘯いていた己はなんだったのか、ぐうの音もでませんでした。







追伸
2/19は「雨水」です。二十四節気更新しました。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
干し芋のタツマ
二十四節気「雨水」の直接ページはこちら
雨水   


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2023年01月30日

【SPAC演劇】リチャード二世 寺内亜矢子 演出




観劇後のアフタートークで、司会の方が「格式高いと思われているシェークスピアを、翻案しないで、当時のままを再現しているのにも関わらず、ちゃんと伝わっている」正確ではありませんが、話されていました。
私も同感で、そのために様々な工夫がなされていました。

「リチャード2せ」は当時人物も多く2時間20分の上演時間でも端折らなければならない多くの情報を伝えることが必須です。
そのために、舞台と観客をつなぐ案内役(永井健二さん)を置きました。またキャラクター作りも当時の貴族を当てながら親しみやすくなっています。
舞台も観客にその場面に囚われさせないシンプルでかつ機能的で、観客がそれぞれの幕にやはり入りやすくなっています。そして時折ユーモラスに振舞う。

劇自体はとても辛辣です。
リチャード王は蓮力者としての嫌な部分、ダメな部分を晒します。その王に打って変るボリングブルックもりリチャード王を反面教師としているわけではない、国のトップとしてどうなのか、という人物です。
でもそれが真実で、普遍です。
歴史にはそんな為政者ばかりではありませんが、それは、その環境に左右されている要素が大きいと、またまた感じてしまいます。

それはさておきこの“リチャード2世” 美術、照明、演技どれをとっても、とても完成度が高いSPACらしい作品でした。

印象に残った一つは“雨漏りバケツ”です。劇自体の不安な政情や人物たちの隠れた思惑の不安定さの象徴として観ていたのですが、それとは別に演出の寺内さんは、「この劇場で実際に雨漏りがあったのをヒントに、舞台と舞台外部をつなぐ役割(劇場内の舞台外にその場所に同じバケツがありました)を担わせたかった」とおっしゃっていました。
それには気づきませんでしたが、そのバケツ、とても良い効果だと思いました。
あるだけで不協和なのです。
他の気になることを消し去って劇に入り込む後押しでした。
  


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2023年01月11日

【歌舞伎座】壽 新春大歌舞伎 通し狂言十六夜清心(いざよいせいしん)




世話物の歌舞伎らしく、恋仲の二人の主役の心中から始まり、紆余曲折あり、ラストはあっと驚きます。
世の中広いようで狭い、そして縁あるモノが絡み合うのは歌舞伎ではおなじみですが、実際にもあることです。
「悪いこたぁできねぇ」の台詞通り、歌舞伎の登場人物よいもはるかに凡人の自分は身に染みる言葉です。

二幕構成でしたが、場が5つあり、その舞台を高速で立ち上がらせるのはいつも同様です。それを観ていると、筋を追いつつどこの場面を強調するかの演出効果を狙い、それにピッタリの舞台を準備する、そのどこを狙うかがしっかりと考えられて、脚本、演技が練られていることが、段々と解ってきるとますます歌舞伎は面白くなります。
そして様式美も解ってくると尚更でしょう。

今年も足を運びたいです。
  


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2023年01月05日

【歌舞伎座】壽 新春大歌舞伎



初日に観劇でした。
講演前に舞台挨拶あり、その後、大神楽あり、幕間には獅子舞がありです。
本講演も、楽しい遠山の金さん、最後の大詰めは出演者揃っての桜の前での舞踊、日本のお正月を満喫できる歌舞伎でした。
良い年を迎えられました。




  


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2022年12月22日

【spac演劇】守銭奴 あるいは嘘の学校 ジャン・ランベール=ヴィルド 演出




主人公のアルパゴンは筋金入りの守銭奴。それに加えて息子と恋人を取り合う父親。劇はアルパゴンと彼の周りの彼に振り回される輩たちの使い喜劇です。

もう年老いてきていいるアルパゴンが金に執着するその気持ちは解らないでもないですが、それが目に余ります。そして恋人を巡ってなぜ息子と確執するのか?
そのどの行為もあまりにも大人げない。
死への不安でカネが頼りなのか、若い妻を娶ることが安寧をもたらすからなのか、そのアルパゴンの心は大きな喪失の埋め合わせなのでしょう。それは亡くした妻の存在ではないでしょうか。
妻は親とも子とも違った特別な存在です。その喪失はどんなモノでも埋め合わせができない、それに抗っているアルパゴンの姿は愛おしくもみえました。

それはおいておいて、このアルパゴンと出てくる輩たちの滑稽さがご機嫌の喜劇に仕上がってました。
演出のジャン・ランベール=ヴィルドも言及していましたが、spacの俳優はじめ裏方のみんなが、この劇の演出の意図を十二分に理解し具現化しているとのこと。
納得できました。
  


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2022年11月29日

【歌舞伎&落語 コラボ忠臣蔵】国立劇場