2023年07月24日
ウィルスVSヒト 人類は見えない敵とどのように闘ってきたのか ジョン・S・トレゴニング 【著)

コロナ禍をきっかけにウィルスについて再確認のために読み始めましたが、ウィルスだけでなく、細菌感染、寄生虫等々についても詳しく、歴史を踏まえて網羅されています。
日本に住む私たちは、たまたまここ数十年はウィルス等の感染の脅威にさらされていなかったことがコロナ禍を体験したことにより身に染みる内容でした。
2023年05月13日
【spac演劇】Dancing Grandmothers~グランマを踊る~ アン・ウンミ演出

ふじのくに世界演劇祭の最終演目で、フィナーレにふさわしい作品でした。
3部構成のダンス演劇です。
1部は演出家のアン・ウンミさん自身と鍛え抜かれた男女ダンサー9人のグランドマザーを踊る劇です。
たどたどしい踊りから始まり、徐々に激しく、力強い踊りになっていきます。10人が舞台上で出入りするのですが、その度に衣装も変わっていきます。色々な解釈があるとは思いますが、私は、グランドマザーが段々と年若く人生を遡る様を演じているように見えました。
最後は子宮にかえっていくようです。
2部は韓国のグランドマザーが踊ります。それを映像で次から次へとみせてくれます。
職場で、商店の店内もあれば店外も、また畑仕事の途中や、港等々、家の中もあれば、老人ホームのような施設内もあります。観光地もあれば空港待合室もあります。
いろいろな場所、シチュエーションで踊るおばあさんたち、皆笑顔です。
3部は日本の年配の女性10名と劇団のメンバーとのコラボレーションで、グランドマザーを踊ります。
19人で、ペアで、ソロ等々でみせてくれます。
年配の女性たちはメンバーに促されていきどんどん活き活きしていきます。みていても楽しくなっていきます。
そしてラストは観客をも踊りに巻き込んでの大団円です。
2部と3部の間に字幕で「笑う門には福が来る」「踊る門には福が来る」が出ますが、まさにそれを実感する劇でした。
踊りがもつ素晴らしさ、それに触発された人の本能が露わになるとそれは幸せを無から作り出す力が発揮されます。それを強く感じました。
演劇祭の締めくくりにこれ以上の劇はないと思わずにはいられませんでした。
2023年05月12日
【spac演劇】天守物語 宮城聰演出

この演劇祭での二度目の観劇は、一度目よりも遠目です。上から見下ろす席でした。
役者の動きが仕草が俯瞰できて、二度目ということもありそれらをじっくりとみれます。
この劇、台詞で状況を把握するのですが、役者間の動きと位置関係でまた仕草でや役者の心情はもちろん、天守と天守下でなにが起きているかをしるします。
そのためにムーバーとスピーカーに別れているのが、今回よく解ります。
特に主役富姫の美加理の仕草と動きは素晴らしいです。
富姫の美しさと図書之介を愛してしまった後悔をしない心と姫としての凛々しさが伝ってきます。
(spacの)宮城さん演出の劇ではマハーバーラタが代表作と思っていましたが、それ以前に造られたこの天守物語も代表作であり、完成度の高い劇だと改めて実感しました。
2023年05月11日
【spac演劇】バンソリ群唱~済州島 神の歌~ パク・インヘ演出

「バンソリ」とは、太鼓プクのリズムに乗せ、独特の節回しで喜怒哀楽を語る朝鮮の民俗芸能とのこと、歌い手は一人で担うところを、この音楽劇は、演出家のパク・インヘさんはじめ6人が語りてです。そして題材は、済州島に伝わる神々の伝説です。
今回の演劇祭ではコロナ禍の影響を受けた作品が少なからずあり、この劇もパク・インヘさんがそれを劇の冒頭で述懐しています。
舞台は二人の奏者と6人の歌い手です。
打楽器と琴のような弦楽器にのって6人の女性の見事な歌声が始終響き渡る音楽劇で、魂に響くと共に癒しの空間を作り出します。
物語はどこにでもある家に神々がいるのは何故か?という日本昔話のような内容で、でも家族とは、を見直して練られたモノです。
この劇は楕円堂での講演でした。楕円堂は100人弱の観客という贅沢な空間です。天井は15mほどあるでしょうか?今回はその作りが教会のような感じに見えました。でも木で囲まれた暖かさを伴います。
この音楽劇を聞いていてその歌声は讃美歌のようにも聞こえ、祖先を敬うようにも聞こえました。
決して宗教的な要素はないのですが、自分が産まれてきた以前の連綿とした祖先があって今がある、そんな癒しを与えられた時間でした。
2023年05月10日
【spac演劇】天守物語 宮城聰演出

10年以上前、「天守物語」を観劇していいますが、その時との演出の違いは覚えていませんが、今回久しぶりに見てSPACらしい、宮城總さん演出らしい天守物語でした。
白鷺城の第五重は魔界の世界で、その富姫と、人間界の図書之介が恋に落ちます。
異世界のモノどうしが惹かれ合うのは宇宙戦艦ヤマト等のsfと同じです。制約があるがゆえにその恋が加速するのは、ロミオとジュリエットでもみられます。また差別を超えていく恋は招かれざる客等、枚挙に暇はありませんし、この映画は1967年ですからまだたった56年前に、この天守物語と同じ葛藤が身近に感じられていたということでもあります。
さて富姫と図書之介ですが、本人たちの気持ちがすぐに適う訳はありません。失明や命の危機にも陥ります。しかし大いなる力は二人を救います。
これは人間の歴史でもあると感じました。
人間社会は全くの未熟です。でもとても良い所もある。
争いは絶え間ないけれど、ほんの少しずつではあっても変わっているのも間違いではない、それは、大いなる力ともいえるのではないかと思いました。
それはさておき、魔界の世界の大騒ぎや大団円になるspac天守物語はこいのぼりの衣裳や獅子舞をはじめとし美術、そして力強くもありしみじみとも響く音楽、観ていて楽しいです。また役者たちの動きも素晴らしい劇でした。
2023年05月09日
【spac演劇】XXLレオタードとアナスイの手鏡 チョン・インチョル演出

スクールカーストを扱っていますが、かなりコミカルでまるで、問題なしとの雰囲気を醸し出していますが、かえってそれが問題の根深さを感じます。
この劇は2014年のセウォル号事件がきっかけで制作されたとのこと、あの事件は韓国に巣くう歪が露わになり、それらが劇中に盛り込まれているようです。
ですから、一見ないげな酒の中に波乱でいる園主になっているのかと解釈しました。
また、舞台は三方が壁で被われていて観客席にだけ開かれています。舞台から楽屋に行けない構造でず。閉鎖された空間はスクールカーストを産む土壌であり、ひいては韓国社会のかつてのありようなのでしょう。
その三方塞がれた舞台では観客席から登場した役者たちは劇中すっと舞台上です。演技をしていない時でもそこにいるということは、直接の関係がない時も、他の役者に影響を与えている効果が出ると解説されていました。
確かに、人間関係というのは直接のやりとりでだけで関係が出来上がるわけではありません。それを強調している演出でした。
重たいテーマではありますが、とても見やすくてところどころ笑いが起こります。80年代のコミカルな日本映画が私は連想しました。
2023年05月08日
【spac演劇】ハムレット(どうしても!) オリヴィエ・ピィ演出

4人の俳優(とミュージシャン1人)があのハムレットを演じるのですが、要所要所分解して世界的な哲学者の解釈をいれて、ハムレット自体を考察する演劇です。
語りつくされたハムレットを、世界一有名な台詞「To be, or not to be, that is the question.」をはじめ数々のシーンや歴史を踏まえた前後の状況、登場人物の立場等で、シャイクスピアの真意に迫ります。
哲学的な考察ですが、劇はあくまでコミカルでユーモアに溢れています。
そのハムレットの分解を単なる議論の題材として料理しているだけでなく、演劇の素晴らしさにも言及しているのが、この劇の語り方でもあります。
人間の存在とはという大上段な問いを演劇賛歌に軟着陸させていました。
2023年05月07日
【spac演劇】アインシュタインの夢 モン・ジンフイ演出

アインシュタインが残した手紙とカフカの「田舎医者」を題材に、10人の男女が舞台上で踊りを交えた不条理劇です。
時間が止まったり空間が変化したりが表現されることがアインシュタインの夢足ることで、「田舎医者」が断片的に語られるのも夢の世界でもあります。
さて時間や空間がままならないこの世界に自分の身が置かれたらと問われているように感じます。そこには実は日常を変わらない、やはりこの世はままならないと言わんばかりです。
劇は最後10人の男女は、この空間にいる衣装を日常着に着替えて旅支度をします。
そうです、そこから抜け出すのも自分次第なのです。
物理学は哲学でもあります。この劇は抽象的に生き方を語っていました。
2023年04月06日
THE FIRST SLAM DUNK 2023日 井上雄彦

ところどころ実写ではないかと思えることに感動です。アニメだから人物の動きや造形を自由にできるからこそ、バスケットボール素人がみていると、実際のプロの試合よりも、バスケットボールって、こういうスポーツなんだと解るように造られているようです。
物語はスポーツものとして王道です。男臭くてシリアスで、時折のユーモアがそれをより味合わせてくれます。
観て良かったです。
追伸
4/6は「清明」です。二十四節気更新しました。
ご興味がある方は、干し芋のタツマのトップページからどうぞ。
干し芋のタツマ
二十四節気「清明」の直接ページはこちら
清明
2023年03月31日
【国立劇場 3月歌舞伎】入門 源氏の旗揚げ/一條大蔵譚/五 條 橋

「平家にあらずんば人にあらず」の頃から、牛若丸と弁慶が五条橋で出会い義経が「源氏の旗揚げ」をするまでの芝居です。
虎視眈々と源氏再興を狙う大蔵卿と常盤御前を描く前半から後半は牛若丸の艶やかで力強い舞です。
平家側は大蔵卿も常盤御前も疑っていて二人はそれを前提条件に耐え眈々と準備をする、その駆け引きは創作ではありますが、心をそそらせます。
歌舞伎では源平の時代物がおなじみですが、史実になぞっていることに加えて工夫をこらした脚本にしているから人気がありわけが解ります。
そして同じ演目でも、いつだれが出演し、どんな演出を凝らしたかという本歌取りの要素がまた良いです。しかし、まだそれを味わえることはできませんが、そんな視点での鑑賞も面白いです。