2011年10月11日
人情紙風船 1937日 山中貞雄

長屋仲間の首吊りの通夜までも(大家にたかり)
宴会にしてしまう、
なかば世の中に流されながらも、逆らいながらも、
生きることを続ける長屋の連中。
金持ちになり、欲や地位や権力を追う商人と侍。
それに寄生するヤクザ連中。
長屋に居て、どうしても仲間のように生きられない、
粋に生きたい主人公と、浪人侍は、
時に同じ気持ちになり、時にそれぞれが理解できません。
けれど、生き抜くことができないことは同じでした。
粋なままでいたい男、
本物の侍でいたい男(侍でいさせたい妻)と妻が、
死を選び終わります。
映画が終わった後は、また、ドンチャン騒ぎの長屋になります。
人間らしい描写が封じ込まれた作品です。
長屋から、子商人から、セットも見事なら、
雨の撮影や光のと影の美しさ、そしてカメラの構図も鮮やかです。
演技人も、江戸から抜け出てきたかのような素晴らしさです。
名人の落語家とも重なりました。
テンポ、リズム、人間の悲哀や欲望、そして優しさと虚しさ、絶望が、
詰め込まれた。評判どおり、期待以上の作品でした。