2013年07月14日
ある海辺の詩人 2011仏/伊 アンドレア・セグレ

小さなヴェニスと呼ばれる、小さな猟師町(島)キオッジャが主役です。
そこにあるオステリアが中国資本になり、
主人公の中国人女性が店を切り盛りするところから物語は始まります。
元の常連が相変わらず集う店で、主人公はカタコトのイタリア語で頑張ります。
彼女には幼い息子がいて、故郷に仕送りしています。
店には気のあう者同士が集まります。(主に高齢者)
落語の浮世床と重なります。
一人の『詩人』と呼ばれる客と仲が良くなった主人公は、
『詩人』とのやりとりが楽しみになります。
けれど、世間体からそれを続けることもならず、
そして、彼との別れが訪れるというお話です。
物語は大きなドラマなく進み終わります。
庶民が生きていくところを見せるだけです。
ただ、『詩人』も異国の人でした。
遠い中国から来たばかりの主人公、
近いユーゴスラビアから来て何十年も島にいる『詩人』
二人にはほんの少しの接点があり、そこから親しくなります。
愛するには決して進まない、相手を想う気持ちは、
さびしくも気丈にいきることを決めている主人公への声援です。
劇中、屈原の詩の引用か、水辺にロウソクを灯すシーンが出ます。
そしてラストにつながります。
幻想的な炎と大きな火、主人公の心の変遷でしょうか。
素朴な人たちが、純朴ではないこと、
それは民族間の隔たりもあってのこと、
でもキオッジャという小さな街は海とともに
ずっと昔からこれからも島の誰にも優しいこと。
それをカメラが伝えます。
起伏がないところから、
こちらに問いを投げかける映画でした。