2013年08月16日
東ベルリンから来た女 2012独 クリスティアン・ベッツォルト

1980年の東ドイツの田舎町で当時の東ドイツを描写します。
ベルリンから左遷された美しい女医が主人公です。
彼女には西ドイツの恋人がいます。
最終的には亡命が目的ですが、彼女には監視がついています。
病院には、やはり左遷された優秀な男の医者がいます。
彼との恋物語でもあり、揺れる心をほぼ無表情で演じます。
共産主義の病んだ社会を垣間見せる映画です。
資本主義が素晴らしいとは思っていませんが、
機能不全に陥りどうにもならない共産主義は、
人の負の部分ばかりが抉りだされてしまったことを表現しています。
人らしさをいうものが失われています。
どんな社会でも状態でも、
嫉妬や支配欲等の悪魔の心は持ってしまうのが人間です。
けれどそればかりが強調されることは、普通ならありません。
人を憎むこともあれが、それを想う自分を悲しむこともあり、
喜びを見出して隣人を認めようとするのも人です。
けれど、疑心暗鬼で保身に走り、それを繰り消して悶々としながらも、
金縛りにあったごとく、そこから一歩を踏み出させなくしたのが、
機能不全の共産主義です。
冷戦後20年以上が経ったから、
それをさりげない日常と結びつけて語ることができるようになったから、
この映画ができたとすると、あの社会体制の下には、
私の想像以上に語れない多くの負があったことを痛感するばかりです。