2013年04月09日
その夜の侍 2012日 赤堀雅秋

ある夏の日の3日間、
5年前にひき逃げで妻を殺された主人公が、
出所して、ノウノウと悪のままのさばっている男を復讐する、
というのが骨子ですが、
両者を取り巻く人間とのつながりがテーマです。
限られた時間の中で限られた人との中で生きるのが人生です。
もちろん誰と何をするかは自分が決めていることですが、
それを自覚していることはあまりありません。
ただなんとなく過ごしている。
不本意な奴と一緒にいることも、
また今日も不本意な一日であったとしても、
それはそれで仕方ないとしている。
ということを肯定も否定もしないで浮き上がらせています。
妻を失う=生きる価値を失う主人公、
支えは復讐で、それを想うことで生きている自覚を得ます。
それに対して、やりたいことを持たない、
気に入らないことが降ってかかると、それを悪意に反応することで
生きる自覚を得る男。
そんな二人と関わりあう人達も、
二人を出汁にして自分が生きていることを自覚しようとしています。
それが無自覚であっても。
登場人物は皆、孤独ではいたくないという選択をしています。
生きることを崇高な観点からではなく、
泥臭い日常から見つめていく映画です。
ひとつ小言ですが、
この映画の設定の各所に現実感をそぐ部分があったことが気になりました。
これは主観ですが、惜しいと感じたので、一言。